さとえブログ

ノンフィクション/エモい/現代っ子哲学

2年間友達だった女とヤった話

さとえ(@satooooo_e)です。

 

大学1年の夏、高校で2年間友達だった女と複数回デートを重ねていた。高校2年で初めて同じでクラスになり、読んでいる本の嗜好が合ったことから彼女と仲良くなった。俺は三島由紀夫に傾倒し、彼女は太宰治に心酔していた。彼女は教室の隅で本を読んでいたが、顔が恐ろしいほどに美しかった。ああ、本当に美しい人は愛とか恋に無関係なのだなあと思った。

 

初めて話したのは文化祭だった。クラスの出し物でたまたま当番が重なり、彼女に話しかけた。俺は知っていたが彼女の名前を聞き、彼女に自分の名前を伝えた。近くで見ると顔は一層美しかったし、パーカーが黒髪ではっきりした顔立ちに死ぬほど似合っていた。姿勢は謙虚だった。輪郭をはっきりと描いたぼかし絵を彷彿とさせた。当番が終わると当たり前のように仲良くなっていたのでLINEを交換した。

 

今では考えられないが、当時の2人は毎日1通、長文でLINEを送りあっていた。お互い好意を感じるまでもなく、それは正しい友達だった。電子の海を渡った交換ノートは向こうに届き、1日かけて波で押し返された。電話は1,2度しかしなかった。毎日の報告的な内容となる日誌は日々の楽しみとなっていた。本の嗜好に触れたのはこの日誌内であった。最初は太宰治が好きなんてメンヘラに近いのか?って思っていたが、どちらかというと強かだった。毎日していたLINEはいつのまにか高校を卒業する頃には途絶えてしまっていた。

 

2年後、大学1年、夏、向こうからLINEがあった。久しぶりー、生きてる?的な内容であった。そのままテンプレ的な会話を続け、2人で会おうという話になった。2年越しの初めてのデートである。

 

最初は2人の最寄りの中点の駅で待ち合わせをし、近くのショッピングモールでデートをした。しばらく服を見た後にカフェに入り、色々話を聞いているとどうやら親が離婚して今は1人暮らしして働いているらしいことが判明した。思わぬ闇的な部分に触れてしまった俺は冷静を保ち、そのまま話を聞いていた。俺が本当に冷静であると思った彼女は、俺に対して以前よりも心を許したらしく感じた。会う目的はこの話を聞いてもらうためだったのか?

 

1回目のデートの目的は2回目のデートを取り付けることである。俺は次のデートを当たり前のように取り付けた。2人で慣れない居酒屋に行くことになった。

 

幸いなことに、年齢確認はされずに2人で飲むことができた。彼女はカシスオレンジ、俺はビールを飲んだ。高校時代の思い出話や誰と誰が結婚した話などをし、お互い3杯くらい飲んで結構酔っ払っていた。俺も普段は強いのだが、雰囲気が助長してふわふわしていた。あれ?そういや向こう一人暮らしだったよな?折角だから行かせてくれ。手作りの料理が食べたいから家行っていい?的な感じで頼んだら、呆気なく承諾してくれた。女の子の一人暮らししている家に行くという経験が初めてだった俺は少し緊張していた。夏だというのにやけに寒い。

 

部屋は散らかってると言うもののしっかりと片付けられており、大切にしているのであろう秩序の特性を感じた。電球は間接照明で、部屋全体の印象は妖しく、本棚を見ると太宰治澁澤龍彦川端康成と並んでいた。彼女の家に行く途中のローソンで買った酒で改めて乾杯した。正直、もう家に来れただけで手料理なんてのはどうでもよくなっていた。話の続きをしていると、好きな音楽の話になった。俺は椎名林檎が好きだと言ったら、彼女は東京事変のギター、浮雲が好きだと言った。iPhoneのプレイリストにはその証拠に東京事変の曲が所狭しとインポートされていた。なんか彼女が愛おしくなってきた。俺は酔いに任せて彼女の手を握った。彼女はどうせ馴れ合いでしょ、と言わんばかりの表情をしている。いや、そうじゃない。今までの女の子で音楽の趣味が被った人はいなかった。それなのに、2年越しでこうした一致を味わった感動が支えとなり、ひたすら愛おしくなった。刹那もなく迷わず唇を重ねた。永かった。ベッドに達する前に彼女は音楽をかけて欲しいと言った。東京事変が解散してから椎名林檎浮雲がデュエットした曲、長く短い祭りを俺は流した。

 

音楽が流れ終わり、さらにしばらく経つとベッドで2人は果てた。猛烈な罪悪感と達成感が俺を襲った。というか、単純にかなり疲れた。一体、付き合うつもりもないのに俺は何故抱いてしまったんだろう。目の前にいる子に申し訳ない。抱いた後の彼女は2年前と違って見えた。ぼかし絵の輪郭が限りなく薄まっていた。生命を薄めたのは一体誰なのか。両親?つい最近別れたと言っていた元彼?分からない。

 

ただ、確かなのは夏のうだるような暑さと間接照明、脱ぎ捨てられた服、2人の身体、呼吸づかいであった。

 

翌朝、帰るころには外の暑さを完全に実感できるようになっていた。しかしiPhoneで気温を調べると、昨日よりも涼しいらしかった。

 

その後、3年経っても彼女からLINEが来ることはなかった。