さとえブログ

ノンフィクション/エモい/現代っ子哲学

俺が医学部を目指さなかった理由

さとえ(@satoe_chan_)です。

 

高校の時の話。

夢野久作の『ドグラ・マグラ』を読んだ俺は、作中に出てくる法医学(死体を解剖して死因を調べる学問)の教授に影響されて一時期医学部を目指そうとしたが、とある理由により断念せざるを得なかった(まあ実際そこまで本気ではなかったが)。

 

俺は血がめちゃくちゃ苦手なのだ。

 

医学部の友人は死体の解剖など慣れたとか言ってるけど、正直俺の場合凡人の比ではない。血液を見ることや病気の話を聞くことにさえ身体が拒否反応を起こす。貧血気味になる。

 

つい先日、病院で採血をした。

行く前から乗り気では無かったが、ジェットコースターは乗るまでが一番怖いのと同じ原理で、針を刺してしまえば何とかなるだろうと思い、平常を装って受付を済ませる。

 

名前を呼ばれ、診察室に入る。

 

「これまでの採血で気分が悪くなったことはないですか?」

 

「はい(大嘘)」

 

「アルコール消毒などでかぶれたことはないですか?」

 

「ないです(早くしてくれ)」

 

「では利き腕でない方の腕をこの台に乗せてください」

 

おそるおそる左腕を台に乗せる。手首に巻いてあるG-SHOCKが重く感じる。

 

「親指を内側に入れて手をグーにして力入れて下さい」

 

静脈がありありと浮き出てくる。これに針刺すのかよ。果たして本当に刺して良いものなのだろうか?

医者が針を取り出す。

 

「少しチクッとしますよー」

 

俺の静脈に針が刺さる。しかし人の血管に針が刺さるなんて日常じゃ決してありえないことだ。早く終わってくれ。

 

「それでは採血しますねー」

 

尿検査の容器を一回り小さくしたようなものの先端と針を結合させる。圧力に負け、真空管に一気に黒い血が飛び出す。小便か?と一瞬思ったが、どう見ても黄色くはないし、陰茎はどこにもない。早く終わって欲しいので力を更に入れるが、ボトルに血液を想像以上に入れなくてはならないらしく、時が経つのが長く感じる。長すぎる。血を取られることなど蚊に刺される以外はしたくないというのに、長い。ボトルいっぱいに血液が溜まった所でボトルが引き抜かれる。次に、針が情けなく抜かれる。やっと終わった。

 

気分悪い。

 

「このガーゼで5分ほど押さえて血が止まったのを確認したら絆創膏を貼ってください」

 

「はい」

 

必死に平常を保つ。他人に見苦しい姿は絶対に見せたくない。

 

貧血気味になりながら診察室を出る。待合室の椅子で待っている間に、受付の人に呼ばれる前に、気分を回復させなければならない。それにしても、この病院は冷房が効きすぎだ。寒すぎる。なんとかTwitterのタイムラインを閲覧し、体調を正常なレベルまでもっていく。こういうときにTwitterは役に立つ。落合陽一がつぶグミをルーティンとして食べることによって自分の変化にいち早く気付くことができるのと同じ原理だ。

 

「さとえさんー」

 

なんとしてでも倒れることはないように必死に立ち、受付で支払いを済ませる。病院という監獄から解放される。自由。

 

病院から出て時間が経つにつれて貧血っぽさはなくなってくる。この貧血は病院という空間も影響しているのかもしれないと一瞬考えたが、保健体育の授業で血液の話に触れた時や、電車で性病について長時間調べていた時にも貧血っぽくなったことを思い出し、否定する。

 

母親からチーズケーキを買ってこいと頼まれたのを思い出し店に行く。血液検査の余韻がまだ残っており、メニューをどっち買えば良いのか忘れる。家に着く。結果、外す。

 

 

 

てな感じで、俺は血液検査や血液に関する病気を調べたり聞いたりすることがとてつもなく苦手だ。それ故に、医学部は目指さなかった。俺が医者になっていたら、間違いなく自分を診察する羽目になっていたであろう。

また、血液検査が無理なので献血はもちろんのこと治験もやろうとは思わない。1日に朝晩2回採血があり、そんな生活を一週間も続けるなんてしたらきっと治験初の死亡例になる……。

 

それにしてもいつから俺は血が苦手になったのであろうか…。記憶に残ってる限りでは、中学校の保健の授業で血液に関する範囲を扱っている時に、耳が遠くなり、冷や汗をかき、目の前が砂嵐がかかったようになる貧血特有の症状に襲われた。しかし、理科の動脈とか静脈とかの分野ではそうはならなかった。

また、血液とは別だが中学校の部活の時、体育館で練習後、立ってミーティングをしたときに同じような症状が現れたことが1回だけあった。果たして、体質によるものなのであろうか?でも、いつかの検査では血液中の鉄分などの値は正常で、貧血気味ではないとの結果が得られたのを覚えている(周りでは貧血気味と診断された人が何人かいた)。

そう考えると、何か血液を嫌がるようになるきっかけの出来事があったのだろうか……?

思い出せない。

 

けどもうメンタル的に強くなるしかない。または貧血にならないコツでも探すか。医者の方がこれを読んでいたら是非原因になりうるものや対処法を教えて欲しい。

可愛いナースの方でもいい。てかそっちの方がいい。